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KAIDAN

終夜灯が消えた町で見つけた静かな影の記憶

2026年10月30日 短編 | 管理人投稿
30日恐怖度☆☆☆☆☆0票・残り30日

その町では、夜になると必ず一軒だけ電灯が消える家があった。誰もがその家を避け、ただ“終夜灯の家”と呼ぶだけだった。私はその話を聞いても不思議に思わなかった。寂れた町のこと、それくらいの奇妙な話は日常茶飯事のように語られていたからだ。

ある晩、好奇心に駆られてその家の前を通りかかった。灯りの一つも点っていないはずの窓が、静かに揺らめく暖かな灯火に包まれているのを見つけた。近寄ると、いつの間にか戸が半開きになっており、薄暗い室内から微かな話し声と笑い声が漏れてくる。私は足を踏み入れた。

中は古い家具と本棚が並び、壁には何枚かの白黒写真が飾られていた。声の主を探そうと廊下を進むと、写真の一枚に目が止まった。幼い女の子が、懐かしい笑みを浮かべている。しかし目が合った瞬間、その笑顔がふっと消え、写真の中の影だけが揺らいだように見えた。

不意に足音が近づき、ふと振り返ると誰もいない。ただ、空気が急に冷たくなったように感じた。慌てて外に出ると、家の灯りはやはり一つも点っておらず、通りは暗闇に包まれていた。けれどあの穏やかな暖かな灯りと笑い声は確かにあそこにあった。翌日、その家について誰かに話す勇気はなかった。

次に通りかかった時、家は取り壊されて更地になっていた。近所に聞けば、あれは何十年も前に住んでいた家族の記憶だという。終夜灯が消えるのは、その家の灯が消えるからではなく、そこで過ごした時間の残響が夜だけ静かに灯るからだと教えられた。

それ以来、町の空気は少しだけ違って感じられる。闇の中で、私たちが忘れてしまった“小さな記憶”が今もそっと息づいているのだろう。終夜灯の家の影は、消えたようで本当はずっとここにあったのかもしれない。

この話、どうだった?

公開後30日間の読者投票で恐怖度が決まります。

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