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KAIDAN

静寂の書店に漂う、消えた頁の秘密

2026年10月29日 短編 | 管理人投稿
30日恐怖度☆☆☆☆☆0票・残り29日

秋の夕暮れ、通り雨のあと、古びた書店の扉を押した。店内は薄暗く、古書の匂いが静かに広がっていた。店主はどこか影のように控えめで、訪れる者の存在を否定しないが、積極的には関わらない様子だった。

棚の隅に目を引く一冊があった。革の表紙は擦り切れ、中の頁は黄ばんでいる。タイトルはなく、ただ無垢な白紙の頁が数ページ続く。ページをめくると、ひとつの頁だけに細かな文字で、誰かの記録らしい文が書かれていた。

書かれているのは、その書店を訪れた者それぞれの秘密や願いだった。名前も日付もないが、確かに生きた人が残した言葉。ページは他に何もなく、その一文が孤独のように滲んでいた。

不思議に思い、店主にその本のことを尋ねると、彼はじっと私を見つめるだけで答えなかった。しかし静かな声で告げた。「その本は、ここに来る誰かの心を映す鏡のようなもの。書いた内容は、外には決して出ない。」

やがて閉店の時間になり、私は本を返した。帰り際にふと見上げると、店の奥の古びた鏡が揺れているようだった。しかし店内には誰も動いていない。鏡の中には、私の知らない過去の訪問者たちの姿と、頁に書かれた言葉がぼんやりと浮かんでいた。

家に帰っても胸のうちは冷たかった。あの古書店で見たもの書いたものは、誰にも話せない秘密の帳簿なのかもしれないと思った。静寂のなか、ひとりぼっちの声が永遠に響き続ける場所。

この話、どうだった?

公開後30日間の読者投票で恐怖度が決まります。

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