KAIDAN
深夜の図書室で見つけた、沈黙を纏う古書の囁き

📖 創作怪談:この物語はフィクションです。実在の人物・団体・場所・事件とは関係ありません。
放課後の静けさが町を包み込む頃、私は学校の図書室に一人残っていた。友人たちはもう帰り、空調の音とページをめくる静かな音だけが響いている。
ふと、いつもは気に留めない奥の棚に目がとまった。埃を被った古びた本が一冊、ひっそりと並んでいる。表紙には薄れて読めない文字が刻まれていたが、何となく手に取ってみた。
ページを開くと、そこには普通の物語とは異なる、静かな語り口で書かれた文章と、不思議な挿絵が混じっている。読み進めるうちに、私は背筋に冷たいものを感じ始めた。物語は、ある古い図書室の秘密について語っていたのだ。
その図書室では、夜遅くに本を読む者にだけ、棚の奥から囁きが聞こえると言う。それは誰にも聞こえず、ただその場にいる者だけが感じ取れる恐怖の声。伝説は時を越えて図書室の本の中に封じられているとも記されている。
ページをめくる手が震える。そんな時、不意に誰かが息を殺して隣にいるような気配を感じ、私は思わず顔を上げた。しかし、そこには誰もいなかった。だが、辺りの空気は確かに変わっていた。
不意に私は本を閉じ、棚に戻した。すると、その背表紙の隙間から、かすかな声が漏れ聞こえた気がした。言葉にはならない、けれど確かな呼びかけ。私は慌てて図書室をあとにした。
翌日、あの古書について調べてみると、その本は数十年前に消えた児童作家の作品であり、謎の失踪事件と深く結びついていることが分かった。誰もその詳細を語ろうとせず、幾度かの調査も不自然に打ち切られている。
それ以来、深夜に図書室を訪れることはなくなった。けれど、時折家で一人静かな夜を過ごすとき、あの本の囁きが遠くから聞こえてくる気がしてならないのだ。
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