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KAIDAN

午前2時13分の着信

2026年10月10日 ネット怪談 | 管理人投稿
30日恐怖度★☆☆☆☆2票・残り30日

母が亡くなって、三日目の夜だった。

午前二時十三分。枕元のスマートフォンが震えた。

画面には「母」と表示されていた。

電話番号は、解約したはずの母の携帯だった。葬儀のあと、父と一緒に電源を切り、引き出しにしまった。間違いない。

呼び出し音が七回鳴って、止まった。

留守番電話が一件。

再生すると、最初に聞こえたのは、水が滴る音だった。ぽた、ぽた、と、間隔をあけて落ちている。

その奥で、母の声がした。

「開けちゃだめ」

それだけだった。

翌朝、父に聞かせた。父は顔色を変えたが、「疲れてるんだろう」と言って台所へ逃げた。私は音声を消さずに残した。

次の夜も、午前二時十三分に着信があった。

今度は電話に出た。

「もしもし、お母さん?」

返事はなかった。ただ、あの水音がする。しばらくして、遠くから何かを引きずるような音が聞こえた。

「そこにいるの?」

「……まだ、開けてない?」

間違いなく母の声だった。生前、私が夜更かしをしているときの、少し呆れたような口調まで同じだった。

「何を?」

その瞬間、玄関のチャイムが鳴った。

深夜二時十三分。誰かが玄関の外に立っている。

スマートフォンから、母の声が鋭く響いた。

「見ちゃだめ!」

私は息を止めた。チャイムがもう一度鳴る。続いて、扉を爪で引っかくような音がした。

「ねえ、開けて。寒いの」

扉の向こうからも、母の声がした。

電話の母は、泣いていた。

「お願い。あれは私じゃない」

私は一晩中、玄関から離れた部屋で膝を抱えていた。外の声は朝まで何度も私の名前を呼び、最後には父の声になり、知らない子どもの声になった。

夜が明けると、玄関の外には誰もいなかった。ただ、ドアの下から細い水の筋が室内へ延びていた。

父に電話すると、しばらく黙ったあと、低い声で言った。

「お前の母さんも、昔、同じ電話を受けたんだ」

「誰から?」

「死んだ、おばあちゃんから」

父は、母が亡くなる前夜のことを話した。午前二時十三分、母は玄関で誰かと話していたらしい。父が声をかけると、母は振り向いて笑った。

「大丈夫。私が代わりに行くから」

その翌朝、母は寝室で息を引き取っていた。

「だから、絶対に開けるな」

父の声が震えていた。

その日の夕方、私は玄関にタオルを敷いた。濡れた床を拭きながら、ふと気づいた。水の筋は外から中へ入ってきたものではない。

玄関の内側から、廊下の奥へ続いていた。

夜になって、また二時十三分が近づいた。

スマートフォンが震えた。

「母」からの着信。

私は震える指で通話ボタンを押した。

「もしもし」

返ってきたのは、私自身の声だった。

「開けちゃだめ」

同時に、背後の押し入れから、こつ、こつ、と音がした。

あの夜、私は玄関を開けなかった。

でも、母が言っていた「開けちゃだめ」は、玄関のことだったのだろうか。

押し入れの襖が、内側からゆっくりと動き始めた。

この話、どうだった?

公開後30日間の読者投票で恐怖度が決まります。

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